Question. 童謡のうたあそびは本当に子どもの発達に良いのか?
童謡は子どもの発達に良い!というのは、よくいわれていること。
私自身、童謡に身近に触れる生活を通じて、わが子の語彙力や科学的な視点が、童謡によって驚くほど豊かになったことを実感しました。
- リズムを感じて、歌にあわせてダンスをする。
- メロディを覚える。
- メロディとリズムにあわせて楽器を演奏する。
- 歌詞のフレーズを覚える。
- 自然環境・動物・虫に関心を持つ。
など、具体的に上げればきりがありませんが、「童謡が子どもを成長させてくれている!」とハッとする瞬間は少なくありません。
では、童謡は、どんな点から子どもの発達にメリットがあるといえるのでしょうか?
ここでは、この疑問に関連する科学的視点を紹介し、テーマごとに実体験を交えて掘り下げてみたいと思います。
幼児期に音楽に触れることにどんな意味があるか?
幼児期の音楽教育は、音楽的能力や創造的思考の発達に限らず、学業成績や、社会情緒的能力、言語習得に対しても多大な貢献をしていることがこれまで多くの研究で認められてきました。
幼児期の音楽教育のテーマの文献を計量的にレビューした研究[1]によれば、幼児期の音楽教育に関する研究の主要テーマとして、
- 音楽に関する知覚と神経の可塑性の関係
- カリキュラム開発と教師の専門性の関係
- 音楽教育とその認知・言語発達への影響
- 子どもの行動とメンタルヘルスの関係
があげられています。
子どもへの影響、という観点から、本記事では、上記1の「音楽に関する知覚と神経の可塑性の関係」のテーマについて深堀りしていきます。
音楽との触れ合いが頭をよくしてくれるって本当?
神経の可塑性とは、経験や学習、環境刺激に応じて構造や機能を変化させる能力、つまり「あたまのやわらかさ」のこと。
音楽を聴き、歌い、体を動かす複雑な処理は、右脳と左脳を繋ぐ「脳梁(のうりょう)」の発達を促すことが知られていますが、ここでご紹介するのは、楽器によって「演奏」する音楽訓練の効果についてです。
ハーバード大学のゴットフリード・シュラーグ(Gottfried Schlaug)博士とマギル大学のクリスタ・ハイド(Krista L. Hyde)博士らによる研究[2](Musical Training Shapes Structural Brain Development)は、楽器のトレーニングが子供の脳の「構造」を実際に変えることを初めて実証しました。
平均6歳の子供たちを、週30分のピアノレッスンを15か月間受けるグループと、楽器演奏をしない対照グループに分けて追跡調査した結果、ピアノの個人レッスンを受けたグループは、右脳と左脳をつなぐ太い神経束である「脳梁」の体積が増加(発達)したことが示されました。ほかにも、脳の運動野(指を動かす指令を出す場所)や聴覚野(音を処理する場所)においても構造的な発達が見られたと報告しています。
また、別の研究[3]では、5- 6歳の子供を対象に、ブームワッカー(別名:ドレミパイプ)で9か月間の音楽レッスンを行ったところ、脳の主要な鉗子領域(脳梁の一部)において神経線維の接続に発達が見られたことが確認されています。具体的には、脳の白質における軸索(神経線維)の密度や長さが増加し、情報の伝達効率を示す指標の上昇、脳梁の前部にある「小鉗子」と呼ばれる領域で顕著な発達、脳の両半球の連携強化が報告されています。
これらの研究は、音楽訓練が、単なるスキルの習得にとどまらず、脳の構造自体を変化させることを示しています。音楽演奏を通じて、聴覚、運動、認知、感情、社会性など、音楽の演奏に求められる多様なタスクを同時にこなすことで、右脳と左脳の接続が促進されたと考えられます。
【うた遊びのヒント】童謡のうた遊びに、楽器を取り入れてみる
そうはいっても、いきなり子どもにピアノの訓練をさせるというのは、なかなかハードルが高いですよね。
でもご安心ください。上記の研究[3]では、ピアノのような両手で異なる複雑な動きをする楽器でなくとも、ブームワッカー(別名:ドレミパイプ)のような、手で叩いて音を出すシンプルなパーカッション楽器の演奏によっても脳の可塑性が示されていることがポイント。
童謡でのうた遊びをする上では、ぜひ子どもの年齢に応じて触れられる簡単な楽器を身近においておきたいところです。童謡のメロディとリズムを味わいながら、子ども自ら「演奏者」になれる環境を取り入れていくのがよさそうです。
【子育て体験談】童謡あそびで、子どもの「演奏者」としての成長を見守る
楽器を演奏する音楽訓練が脳の強化にこれほど明確に貢献してくれることが、既往研究で示されているのであれば、楽器演奏を日常の童謡あそびに取り入れないのはもったいない。
わが家では、音楽を聴いたり、童謡を歌ったりする際には、0歳の頃から、音の出るおもちゃを身近において、実際にリズムに合わせて音を出してあそんでいました。
生まれて数か月は、人形やボールに入った鈴。少しして安全に握って触れるようになってからは、昔ながらの木製の左右にふってカチカチなるおもちゃ、またもう少し大きくなってからは木製の太鼓…など、0歳のうちは、鈴や打楽器で音を出して遊ばせていました。
1歳を迎えてからは、小さなトイピアノで複雑な音を奏でられるようにしました。まだまだ、自分ひとりでメロディを演奏するには至りません。それでも、最近は、曲にあう音色を両手の人差し指で一音一音、音色を確かめながら弾いています。1年前、めちゃくちゃに両手でバーンバーンと鍵盤を叩いて弾いていた姿とは全く違い、明らかに「演奏者」としてレベルアップしています。
今後もうた遊びをする際は、うた、ダンスとともに、何らかの楽器を小道具にプラスして、わが子の「演奏者」としての成長を見守っていきたいと思っています。
引用文献
[1] Li, Q., and Y.-L. Chang. 2026. “Advancing Early Childhood Music Education: A Three-Decade Review of Cognitive, Linguistic, and Instructional Developments.” European Journal of Education61, no. 1: e70467. https://doi.org/10.1111/ejed.70467.
[2] Hyde KL, Lerch J, Norton A, Forgeard M, Winner E, Evans AC, Schlaug G. Musical training shapes structural brain development. J Neurosci. 2009 Mar 11;29(10):3019-25. doi: 10.1523/JNEUROSCI.5118-08.2009. PMID: 19279238; PMCID: PMC2996392.
[3] Dies-Suarez, P., et al. (2016). Musical Training Creates New Brain Connections in Children. Paper presented at the 102nd Scientific Assembly and Annual Meeting of the Radiological Society of North America (RSNA), Chicago, IL.


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