与田準一作詞・細谷一郎作曲の童謡『たかいたかい(たかいたかいしてよ)』は明るく気品の高い名曲です。
幼い子どもとの毎日の中で、何度もせがまれる言葉。「だっこして!」「たかいたかいして!」
成長とともに、わが子の重みがずっしりと腕に伝わってくるようになりますが、いざ「たかいたかい」をしたときのうれしそうな笑顔をみると、ついつい何回でも応えてあげたくなってしまいますよね。
この曲は、幼い子どもが「たかいたかい」を切望する気持ちが、リズミカルに描かれています。子どもと一緒に曲をうたえば、ポプラの木の鮮やかな緑や爽やかな海風を感じる情景の中で、「たかいたかい」をして楽しく遊んでいるような気分になれるはずです。
ぜひ、お子さまと一緒に聴いてみてくださいね。
この記事ではうた動画とともに、童謡『たかいたかい(たかいたかいしてよ)』の歌の動画とともに、歌詞や曲の背景、そして動画制作でこだわったポイントをお伝えします。さらに、この曲にまつわる私自身の子育てエピソードもご紹介します。
※本記事に掲載している動画(ピアノ伴奏・歌・イラスト)は、AI生成ツール等は一切使用せず、すべて当サイトの運営者が自ら演奏・歌唱・作画をして丁寧に制作した完全オリジナルコンテンツです。
童謡「たかいたかい(たかいたかいしてよ)」の歌詞と作品の背景
歌詞
作詞:与田準一 作曲:細谷一郎
母さま 、母さま、 高い高いしてよ。 あおいあおいあちらを 見せてよ、見せて。 お屋根の あの空 見せてよ、見せて。 もっとよ、もっとよ、 高い高いしてよ。 ポプラの 向こうを 見せてよ、見せて。 ちらちら あの海 見せてよ、見せて。 母さま、母さま、 高い高いしてよ。 マストを、けむりを 見せてよ、見せて。 いつかの あの船 見せてよ、見せて。
曲の背景:幼い子の切望する気持ちを気品高く表現『たかいたかい(たかいたかいしてよ)』
2つのタイトルで親しまれる時代を超えて愛される名曲
この曲は、1929年(昭和4年)「コドモノクニ」10月号にて初めて発表され、当初の題名は『たかいたかい』でした。その4年後に発刊された第一童謡集「旗・蜂・雲」(1933年・アルス社)[2] では、『高い高いしてよ』というタイトルで掲載されたようです。以降出版された楽譜をみても、1969年(昭和44年)の刊行物[3]では『たかいたかいしてよ』、1979年の刊行物[1]中では、『たかいたかい』と、出版物によってタイトルの表記には揺れがありますが、どれも同じ曲を指しています。
※今回のうたの動画は、1979年(昭和54年)発行の楽譜 [1]に基づき、タイトルは「たかいたかい」、歌詞は2番までの構成で制作しています。
幼い子どもの心を巧みに表現する歌詞
作詩を手掛けたのは、『ことりのうた』の作詞で知られる与田準一氏です。
詩全体から、大好きなお母さんに「たかいたかい」をしてもらいたい、幼い子のまっすぐな気持ちが伝わってきます。「母さま、母さま」と繰り返されるフレーズによって、どうしても「たかいたかい」をしてほしい!とねだる、子どもならではの可愛らしさが表現されています。
心はずむメロディが、子どもの気持ちを彩る
童謡『たかいたかい(たかいたかいしてよ)』は、細谷一郎氏(1909年~1991年)により作曲されました。細谷一郎氏は、「みつばちぶんぶん」、「はるがくる」、「とおせんぼ」など多くの童謡作品で知られます。
与田準一氏の上品な詩が、細谷一郎氏の明るくリズミカルな旋律にのることで、幼い子どもが「たかいたかいしてよ」と母親にせがむ気持ちを品よく、華やかに盛り立ててくれています。
うたのモデルは北原白秋の娘さん?
また、冒頭の「母さま、母さま」との呼びかけから、どこか気品漂うご家庭の風景が目に浮びます。実は、作詞者の与田準一氏は、北原白秋氏の自宅に住み込みをして、助手や息子さんの家庭教師をしていた時期がありました。そのため、童謡『たかいたかい(たかいたかいしてよ)』は家で可愛がられていた北原白秋の長女さんがモデルになったといわれています[2]。
【制作秘話】動画に込めたこだわり:イラスト・伴奏・うたのポイント
動画を制作するにあたって大切にした、イラストや音楽へのこだわりをご紹介します。
イラスト:久しぶりに会った姪っ子たちとの楽しい時間
童謡『たかいたかい(たかいたかいしてよ)』のピアノ伴奏の歌をきくと、メロディに合わせて歌詞の情景がキラキラと輝くような印象を受けます。
「たかいたかいをされて喜ぶ子ども自身」や、歌詞にある「あおいあおいあちら(海)」「おやねのあのそら(空)」といった情景が、フワッと光をまとって浮かんでくる……そんなイメージがわきました。
動画のイラストには、その美しい情景に、実際に「たかいたかい」をして喜んでくれた私の姪っ子の姿を重ねて描いています。
ピアノ伴奏:青空が広がるような「ニ長調」の美しい響き
この曲のピアノ伴奏は、情景をきらきらと輝かせています。それは、この曲が、明るく開放感をもった「ニ長調」で作られているからです。
この調性がもつ明るい響きは、どこまでも続く青空のイメージにぴったり。空高く「たかいたかいして!」と願う歌詞の世界観をより一層引き立ててくれています。
ポイント:軽やかな音色を重ねて
伴奏する際には、ニ長調ならではの美しい音の組み合わせを響かせることで、この曲の良さがぐっと際立ちます。
気を付けているのは、音が重くなりすぎないこと。「重たい音」は、空高くふわりと舞い上がる「たかいたかい」のイメージには合いませんよね。そのため、軽くリズミカルに弾くことを心がけ、フレーズのまとまりの中で音の組み合わせを楽しめるよう意識しました。
ポイント:「してほしい!」の気持ちは特別仕様で
この曲のピアノ伴奏は全体を通じてピアノ(p)~メゾフォルテ(mf)と控えめな音量。ただし、「たかいたかいしてよ」、「みせてよみせて」と、子どもが「たかいたかい」を切望する気持ちを表す部分のみ、ぐっとボリュームが上がります(フォルテ)。
さらに、この部分だけ、和音を少しずらして弾く「アルペジオ」という奏法が使われており、音の響きがより強調されています。
これによって子どもが「みたい!」と切望する気持ちの強さや甘えた様子、見たい景色のイメージを広げてくれる役割を果たしています。
ピアノ伴奏の際は、切望する気持ちの部分をボリュームとアルペジオでしっかり強調することを心掛けました。
うた:心地よい音域で、最後は優しく包み込むように
この曲は、子どもも大人も、無理なく明るい声で歌える音域で作られています。そのため、とても歌いやすく感じます。
歌うときに意識したのは、曲の最後の「みせてよみせて」の歌い方です。それまでの「切望を表現した部分」では、力強かったピアノ伴奏が、最後だけは音量が抑えられ、アルペジオもなくなります。この変化が、「やっとたかいたかいしてもらえたんだね、よかったね。」という安心感を与えてくれるのです。
歌声も、それに合わせて、最後の部分はそっとやさしく、ふわっと包み込むような歌い方を意識しました。
【童謡子育て体験談】「海みせて!!」見えない向こう側に広がる子どもの想像の世界
わが家にとって、この曲はわが子が生まれてまもない頃からピアノでの弾き歌いしながら親しんできた大切な一曲です。
「母さま、母さま」と上品な呼びかけや「たかいたかいしてよ」と子どもが愛らしくねだる声に、「いつかわが子もこんな風におねだりしてくるのだろうか」と子どもが成長した未来が楽しみになったことを覚えています。
現在、たくさんおしゃべりができるようになったわが子からは、毎日のように「だっこして」「たかいたかいして」とあの頃夢見た通りの嬉しいリクエストをもらっています。
見えない世界に、何を見ているか?
その日常の中で、子どもの想像力の面白さに触れた場面がありました。
私たちは、東北地方の太平洋側にある高台に暮らしています。自宅から海は直接見えませんが、少し散歩した先に、松林の隙間から海やそこに浮かぶ船などを一望できるお気に入りのポイントがあるのです。わが子がまだ0歳や1歳なりたてで、ベビーカーでお散歩していた頃から、そこで「たかいたかい」をして遠くの船を見せてあげると、わが子はいつも大喜びしていました。
今は自分の足でしっかりと歩いて散歩を楽しんでいますが、道中には高い木や草、建物など、わが子の目線からは先が見通せない場所がたくさんあります。あるとき、わが子は、自ら足をとめると、低い目線から一生懸命あたりを見回し始めました。そして、その先に何があるのかじっと見極めるようにして、こういったのです。
「海、みせて!!」
「あの先は海」
そこは、背の高い木々に囲まれた小高い丘でした。豊かな高木やアジサイなどの低木が茂り、わが子の背丈ではどうしても先が見通せない場所です。
実際には、その50 メートルほど先に池があり、「パシャッ」と水鳥が着水する音がかすかに聞こえていました。見上げれば、水面から反射したお日さまの光が高い木の梢をキラキラと照らしながら揺らいでいました。わが子は、そのかすかな「音」や前方の梢で輝く反射した「光」の様子から、「この先にはきっと海が広がっているはず!」と自分なりに判断したようでした。
「海かな、どうかな?」と少し近づいてから、肩車をして池を見せてあげました。「向こう岸が見えるね。これは池っていうんだよ」と説明すると、「池かあ!」と納得した様子。その顔は、満足気で嬉しそうでした。 そこは、実際には海ではありませんでした。それでも、幼いながらに、周囲の観察にして得た限られた情報から、見えない世界に「広い海」思い描いていたわが子……。
「見たい!」という強い好奇心が想像の翼を広げていたのです。子どもの持つ想像力や鋭い観察力を垣間見て、心から成長を感じた、印象深い出来事でした。
まとめ:『たかいたかい(たかいたかいしてよ)』は子どものピュアな好奇心が凝縮された童謡
童謡『たかいたかい(たかいたかいしてよ)』は、与田準一さんの上品な言葉選びによって、「たかいたかいをしてほしい!」と願う子どもの真っ直ぐな心情を、情緒豊かに伝えてくれる名曲です。
「母さま、母さま」「たかいたかいしてよ」「みせてよ、みせて」と繰り返される愛らしいフレーズ。そこには、大好きなお母さんに甘えたい気持ちや、高い視点から未知の世界を覗いてみたいという、小さな子どもならではのピュアな好奇心がぎゅっと凝縮されています。
細谷一郎さんによる明るく優雅な旋律は、そんなわが子のワクワクする気持ちを、品よく華やかに盛り立ててくれます。
ポプラの緑が揺れ、爽やかな海風が吹き抜けるような情景が浮かぶこの曲は、特に春から初夏にかけての季節にぴったりです。お散歩の途中で見つけた光や音から、「あの向こうには何があるのかな?」と一緒に想像を膨らませるのも素敵ですね。
重たくなったわが子を抱き上げるのは少し大変な時もありますが、この歌を口ずさみながら「たかいたかい」をすることで、今しか味わえない心を通わせる瞬間を、より豊かに楽しめるはずです。
ぜひ皆さまも、お子さまと一緒に口ずさんでみてくださいね。
参考文献
[1] 長井春海編, 「みんなでうたおうこどものうた1」, 全音楽譜出版社, 1979年
[2] 畑島喜久生, 「与田準一の珠玉の詩」, リトルガリバー社, 2001年
[3] 中田喜直・小林純一編, 「現代こどもの歌名曲全集」, 音楽之友社, 1969年


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