童謡「春が来た」の歌詞と背景をピアノ伴奏のうた動画&童謡子育て体験談とともに詳解(高野辰之作詞・ 岡野貞一作曲)

春が来た illustrated by Ayako
目次

童謡「春が来た」の魅力と動画

童謡「春が来た」(作詞:高野辰之 作曲:岡野貞一)は、農村の原風景の中に春が満ち溢れる様子を描いた、明治時代より長くうたわれ続ける春の名曲です。

東北で暮らし、3月には関東地方や中部地方に行き来することの多い私たち家族は、この南北の高速移動を通じて、季節をタイムスリップします。

車窓の景色が、雪解け間もない茶色い世界から、ピンクや黄緑のパステルカラーが広がる世界にかわる様子には、世界に春が満ち溢れる喜びを感じざるを得ません。

童謡「春が来た」は、まさにその気持ちをうたった曲です。

この記事では、うた動画の紹介とともに、歌詞や曲の背景、制作のこだわり、童謡「春が来た」に関する子育てエピソード、うたあそびのアドバイスなどをご紹介します。

※本記事に掲載している動画(ピアノ伴奏・歌・イラスト)は、AI生成ツール等は一切使用せず、すべて当サイトの運営者が自ら演奏・歌唱・作画をして丁寧に制作した完全オリジナルコンテンツです。

童謡「春が来た」の歌詞と作品の背景

歌詞

作詞:高野辰之 作曲:岡野貞一

春が来た 春が来た どこに来た。
山に来た 里に来た、 野にも来た。

花が咲く 花が咲く どこに花が咲く。
山に咲く 里に咲く、 野にも咲く。

鳥がなく 鳥がなく どこでなく。
山で鳴く 里で鳴く 野でも鳴く。

歴史に名を刻む名曲『春が来た』の背景と意外な評価の分かれ道

明治の終わりから現代まで、100年以上にわたって歌い継がれてきた『春が来た』。この曲には、知られざる歴史と、専門家たちの間で熱く交わされた意外な論争があります。

豪華コンビによる「学校唱歌」の誕生

歌詞のルーツは、1903年(明治36年)の教科書に掲載された「のあそび」という散文にまでさかのぼります。その後、1910年に曲が付けられ、広く親しまれるようになりました。

作詞は国文学者の高野辰之、作曲は岡野貞一。この二人は『故郷』『朧月夜』『春の小川』など、日本の美しい四季を描いた不朽の名作を数多く世に送り出した黄金コンビです。

評価を二分する「究極のシンプルさ」

しかし興味深いことに、この曲への専門家による評価は真っ二つに分かれています。

まず、「厳しい評価」を下す声があります。
「公平に見れば凡作である」という意見や、「歌詞が抽象的すぎて情景が浮かびにくく、リズムも新鮮味に欠けるため、音楽教材としての評価は低い」とする指摘です [1]。

しかしその一方で、春の歌の最高傑作」と絶賛する声も少なくありません
「春の気配がシンプルなリズムの中で躍動している」
という意見 [2] や、日本語の定型(七五調など)にとらわれない「五・五・五・五」という大胆なリズムが、春ののびのびとした雰囲気を完璧に表現している[3]といった高い評価も存在します。

まとめ

あえて具体的に描きすぎない「シンプルさ」こそが、凡作に見えるか、あるいは想像力をかき立てる傑作に見えるかの分かれ目なのかもしれません。 みなさんはこの曲を聴いたとき、どちらの意見に近いと感じるでしょうか?

【制作秘話】イラスト・ピアノ伴奏・うた動画制作でのこだわりポイント

イラスト:車窓から眺める春色のパノラマ

高野辰之・岡野貞一コンビによる他の名曲と比べ、『春が来た』はどこか「おおらかで広がりがある」のが特徴です。特定の場所や対象に焦点を絞るのではなく、春へと塗り替えられていく里山全体の変化を、遠景から伸びやかに描いています。

私自身、この曲を歌ったとき、新幹線の車窓から眺める広大なパノラマが脳裏に浮かびました。

3月の東北・上越新幹線から見えた、桜のピンク、菜の花の黄色、新緑の黄緑……。

あの心が弾むような色彩を、イラストでも「山里の全体像」として表現しました。

また、3節には、春の鳥として、ぱっと頭に浮かぶ、歌いながら嬉しそうに飛ぶ雲雀の姿を描きました。

ピアノ伴奏:高揚感を刻むリズムとスピード感

この曲のピアノ伴奏の鍵は、春が訪れる喜びを表現する「躍動感」です。

テンポの設定

伴奏譜では、心臓の鼓動より少し速めのテンポ(♪=126)を維持することで、ウキウキした高揚感と景色が次々と移り変わるスピード感を表現しました。

左手の技法(アルベルティ・バス)

左手はアルベルティ・バスとよばれる演奏形式(ドソミソ、ドソミソ・・・)によって和音を細かく分散させてリズム感を表現しています。

リズムの要となる左手は、音の粒をきれいに揃えて軽快に流れるような春の空気を醸成しています。

右手のフレーズのまとまり

また、右手で奏でる主旋律は、スラーでつながれたフレーズのまとまりを大切にしました。

シーンが切り替わる節目で音が濁らないよう、音の終わりに意識を向けて丁寧に演奏しています。

歌唱:広がる情景を喜びとともに

歌詞にある「山に来た、里に来た、野にも来た」という言葉通り、春の気配がどんどん押し寄せてくる様子を、わずかな音量の変化で表現しました。

春が世界へ広っていく情景をイメージしながら、その訪れを心から喜ぶ気持ちが伝わるよう歌唱を目指しました。

【童謡子育て体験談】『春が来た』を歌って気が付いた、春が訪れる「順番」の謎

童謡『春が来た』は、日本の原風景に春が満ちあふれる喜びを、伸びやかな旋律で描いた名曲です。しかし、子どもと一緒にこの歌を歌う中で、私はある不思議な「違和感」を抱くようになりました。

旅行の車窓に見る「タイムトラベル」のような春

前節で、この曲のイメージとして「新幹線の車窓から眺めるパノラマ」のお話をしました。

特に3月、東北から南へ向かう旅は最高です。南下するにつれて、景色の中に春の色がどんどん増えていく様子は、まるで近未来へ向かうタイムトラベルのよう。

遠く南の方角に見える山のふもとが色づき始め、やがて近くの里や野原の眺めにもパステルカラーが広がっていく。その光景はまさに、歌詞にある通り「山に来た、里に来た、野にも来た」という順番そのものでした。

東北の日常で感じた、歌詞への「違和感」

ところが、旅行を終えて東北の自宅に戻ると、あることに気づきました。
雪深い東北の地で、じっと春を待つ日常の中で歌ってみると、どうにも歌詞の「順番」がしっくりこないのです。

豪雪地帯では、山はゴールデンウィーク頃まで白い雪をかぶっています。私たちが春を実感するのは、まず身近な「里」や「野」の植物が芽吹くとき。そこから徐々に山の雪解けが進み、山が青々と色づいていく……。

つまり、実感としては「(里・野)→山」の順番なのです。

花も低い土地から咲き始めますし、冬を越した鳥たちの美しい声が響き渡るのも、まずは越冬先のふもとの里からのはず。それなのに、なぜ歌では「山」が最初なのでしょうか

歌詞のルーツに隠された、もう一つの順番

気になって調べてみると、意外な事実がわかりました。
この歌詞のルーツとされる明治36年の読本『のあそび』では、「山に来た。野に来た。さとにきた。」という順番だったそうです [1]。詩に曲がつく過程で「野」と「里」の順が入れ替わりましたが、それでも「山」が最初であることに変わりはありません

もし、作者がこの順番に何か意図を込めていたとしたら――。

山を最初にうたうことには、どんな意味があるのでしょうか?

童謡「春が来た」が映し出す、あなただけの風景

そこで再度、童謡「春が来た」の特徴に立ち返って考えてみます。

高野辰之・岡野貞一コンビによる他の名曲、例えば『朧月夜』や『春の小川』は、情景がとても具体的に描かれています。しかし、それに比べると『春が来た』の歌詞は非常にシンプルです

「花」や「鳥」といった言葉が使われていても、具体的な種類までは指定されていません

あえて対象を限定しないことで、この曲は「どんな花が咲き、どんな鳥が鳴いているか」というイメージを、聴き手・歌い手の想像力に委ねているのです。

つまり『春が来た』は、山里に特定の「春のサイン」が広がっていく様子を時間的に追っているのではなくあちこちで見つかる多種多様な「春」の瞬間を、「山」「里」「野」のシーンごとに、スナップ写真のように切り取ってイメージさせる歌だといえるのではないでしょうか。

みなさんは、この曲を口ずさむとき、どんな「花」や「鳥」を思い浮かべますか?

聴き手や歌い手にイメージが委ねられているからこそ、ふいに浮かんでくる景色には、あなたの生い立ちや経験、日々の暮らしに基づいた「あなただけの視点」が映し出されているはずです。

まとめ:童謡『春が来た』が運んでくる、あなただけの春

作詞・作曲の名コンビが手がけた『春が来た』は、まさに時代を超えて愛される春の名曲です。

この歌は、山、里、野原といった日本の原風景を大きな視点でとらえ、春に染まっていく景色の移ろいをおおらかに描き出しています

この曲の最大の特徴は、あえて言葉を尽くしすぎない「抽象的な表現」にあります。

シンプルな旋律と詩だからこそ、聴く人・歌う人それぞれの心に、自由なイメージを広げる余白を残してくれているのです

お子さまと過ごす時間には、ぜひ身近な場所でその土地ならではの「」を探してみてください。

「あの時、一緒にあのお花を見つけたね」「あの鳥の声を聞いたね」

そんな親子での実体験が積み重なることで、お子さまが将来この曲を口ずさんだとき、その心には世界にたった一つだけの、色彩豊かな春の情景が広がるはずです。

参考文献

[1] 上笙一朗, 「日本童謡事典」, 東京堂出版, 2005年

[2] 金田一晴彦, 「永遠に歌い継がれて」(高野辰之(その生涯と全業績)), 郷土出版社, 2001年

[3] 横山太郎・岩崎一彰, 童謡大学 童謡へのお誘い, 自由現代社, 2001年 

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